Aminosäureがsichになるまでの間に考えたこと

本などをきっかけに考えたこと。

俳コレ

俳コレ

俳コレ

とてもおもしろかった。
俳句の楽しさを再発見したかんじ。
ぱっと見おとなしめの句が光を放つことに改めて驚いた。
日常の事象を日常の言葉で表すのって強いな。


気に入った人の数句を挙げてみます。
本全体として素敵なんだけど、その中でも。


●福田若之
歩き出す仔猫あらゆる知へ向けて
とんぼととんぼ溶接されたように飛ぶ
春はすぐそこだけどパスワードが違う
伝説のロックンロール! カンナの、黄!
冬の月離陸するとき血が重い
鶴ひくに一縷の銀も残さゞる


●小野あらた
かき氷味無き場所に行き当たる


●松本てふこ
おつぱいを三百並べ卒業式
空席に編集長の春ショール


●矢口晃
電話鳴りゐたりグツピー死にゐたり
会社辞め口座残りぬ年の暮
三匹の蝶々ひと組はつがひ
(2003年ぐらい以降がおもしろい。)


●林雅樹
枯野にて曾良芭蕉を羽交締め
狐火に馬鹿と叫んで後悔す
短夜や地獄絵どこか愉しさう
外人にheyと云はるゝ土筆かな
遠足のひとりは老いて帰りけり
草いきれ河童釣れたらまづ皿割る
一筋の黒髪浮ける泉かな
(小学生男子の描く漫画なみのハイセンス。素敵。)


●雪我狂流
らんちうが普通の顔をしてをりぬ
七夕や少し楕円の針の穴
鯛焼きの上半身を貰ひけり


●齋藤朝比古
うすらひの水となるまで濡れてをり
巣をすこし壊してゆけり巣立鳥
ちちははが金魚の部屋に座りゐし
痛きまで引つぱりて結ふ祭髪
敵味方入り乱れたるシャワーかな
(外から見た青春ってかんじ。瑞々しい。)


●岡野泰輔
滝の上に探偵が来て落ちにけり
セーターの脱いだかたちがすでに負け
音楽で食べようなんて思うな蚊
盆の僧いきなりスピーカーに触る


●小林千史
月を見るためには一度倒れねば
書けるとき書け自らを食ふ月のごと
(山西雅子さんの小論とセットで楽しめた。)


●渋川京子
良夜かな独りになりに夫が逝く
死にゆくに大きな耳の要る二月
つくし煮るどの時間にもつながらず
秋帽子味方持たねば自由なり
間取図に足す月光の出入り口
神送りには赤き下駄鳴らすべし
一本になりたき春の煙突群


津久井健之
墓地は石の多きところや夕桜
飼猫の柄教へあふ夜の秋
くちびるとジャムのふれあふ十三夜
ちよつといい豆腐を買つて木枯しへ
兎飼ふしづかに暮らすために飼ふ
(この人の日常はたのしそう。櫂未知子さんの小論の通りだと思う。)


●津川絵理子
小春日のペンキが流れつつ乾く
巣の中のかへらぬたまご梅雨深し
雛このさらはれさうな軽さかな
向日葵のその正面に誰も居ず