100題100句
100題100句
こっそり。
001:初 初蝶や遠くを見続けて鼻血
002:幸 去年の吾に幸せ分けるつもりはない
003:細 新学期最も細い筆選ぶ
004:まさか 花守がまさかの家出皆おろおろ
005:姿 裸で入る姿見の座敷へと
006:困 槍烏賊の置き場に困る魚屋よ
007:耕 耕すや地球に余裕あるかぎり
008:下手 笹鳴や下手な刺繍のある鞄
009:寒 動くもの疎ら即ち寒さかな
010:駆 競い馬真夜の天井駆け抜ける
011:ゲーム 賽子の目だけ燕が来るゲーム
012:堅 煎餅の堅さに倦みてかぎろえる
013:故 帰りたき故の健気やチューリップ
014:残 グラタンのお焦げは苦し残る鴨
015:とりあえず とりあえず花守にやるマドレーヌ
016:絹 入学の子が渡るなり絹の道
017:失 失策の兄弟が泣くねじあやめ
018:準備 人となる準備銀漢飲み込みぬ
019:層 何もせぬ時間の層や金魚玉
020:幻 幻の熊にもらった白地図よ
021:洗 洗われて風呂桶いっぱいの蝙蝠
022:でたらめ でたらめの会話嬰児と棒鱈と
023:蜂 蜂の巣のある玄関となりにけり
024:謝 すぐ去りし百足にしばし感謝など
025:ミステリー ミステリー小説忘る海の家
026:震 物持てば震える指の美しき
027:水 新橋の絵の具溶け出す春の水
028:説 空蝉に愛されているちう仮説
029:公式 公式を覚えよ夏の海を見よ
030:遅 遅き子を前に行かせる風の盆
031:電 遠足の電車ぶどうのあめ転がる
032:町 故郷に似る蜜柑の町を通りけり
033:奇跡 あまりにも美味い奇跡の空豆よ
034:掃 責める人無し春暁の掃除夫を
035:罪 指切れば罪滴るや日日花
036:暑 云わずとも暑し親戚集い来る
037:ポーズ スケッチをされるポーズの石鹸玉
038:抱 春の土抱えるほどの器かな
039:庭 東風吹くや街見下ろして庭に居る
040:伝 伝言の張られし机山粧う
041:さっぱり 雪掻きはさっぱりわからないと云う
042:至 考えて考えて秋の野に至る
043:寿 細胞に電池に寿命櫻烏賊
044:護 朧夜の介護保険の話する
045:幼稚 あわれかの幼稚な記憶甘茶仏
046:奏 南極の白夜風琴奏でけり
047:態 横柄な態度でねずみ花火せり
048:束 コピー紙の束や落花の始まりに
049:方法 蚯蚓鳴くしんにょう上手く書く方法
050:酒 白酒の面白がっている姉よ
051:漕 雨白く濁るほど鞦韆を漕ぐ
052:芯 猫と目を合わせずりんごの芯を食う
053:なう ラスボスを前にして草団子なう
054:丼 七夕の牛丼染みる紙袋
055:虚 爽秋の虚無洗濯機口開けて
056:摘 学校もお家も遠し薺摘む
057:ライバル ライバルも春の水車を回し出す
058:帆 箱庭に帆を立ててより空の色
059:騒 子猫来てこけしにじゃれる騒々し
060:直 蛇穴を出でてジーンズ直にはく
061:有無 問題の有無を論じる牛蛙
062:墓 春の野の墓掘れば骨出で来るよ
063:丈 淡雪や手尺で丈を測られる
064:おやつ さぼてんと書類をよけておやつかな
065:羽 手羽先を買って猫の子拾いけり
066:豚 仲直りし難し春の蒼き豚
067:励 励まされ耳の大きな秋の空
068:コットン コットンを母が隠してしまう春
069:箸 箸置きに大きなくびれリラの雨
070:介 手に余る仲介業者春炬燵
071:謡 人の手になる童謡と紫陽花と
072:汚 足跡が蜜柑畑を少し汚す
073:自然 飼われしを自然に帰す冷蔵庫
074:刃 五月雨るる砥ぎ専門の刃物やさん
075:朱 三日月や朱墨の海が涸れそうだ
076:ツリー クリスマスツリーの雪は綿である
077:狂 遠花火狂った狐本当めく
078:卵 春日傘卵が少し割れてしまう
079:雑 夏蜜柑待つ雑巾を縫いながら
080:結婚 山桜桃咲くひっそりと結婚す
081:配 川沿いに苺配ってゆく仕事
082:万 夏近しトランペットが三万円
083:溝 天の川溝に飴玉落っことす
084:総 春霖の夜に開く設立総会
085:フルーツ フルーツのお城崩れる冬の果
086:貴 春愁の仔牛のような貴金属
087:閉 閉店や帰りとぼとぼ花篝
088:湧 日常の湧いて菫が満開に
089:成 冬の宿栗鼠の蘇生に成功す
090:そもそも そもそもの楓の庭を覆す
091:債 買うならば国債と言う風邪の床
092:念 念を押す木苺ジャムの鍋のこと
093:迫 蛞蝓が水に没する迫力よ
094:裂 爆裂種玉蜀黍は塩味に
095:遠慮 桜桃の木の夢なれば遠慮がち
096:取 綿菓子を取り合いながら帰り道
097:毎 毎日が颱風である神の村
098:味 春時雨やんでいるときレモン味
099:惑 穴惑い忘れることを忘れたる
100:完 完全な妻となりたる日永かな